好きな男の目標や見たい景色が、私の見たい彼像や見たい景色と違いすぎて絶望する。
好きな男が好きだった男になってゆく。
好きな男なんだけど好きな男の中の嫌いなところが明確になっていく。
「好きな男」と「好きな男の嫌いなところ」と「嫌いな男」と「嫌いな男の好きなところ」が曖昧になってゆく。
好きな男の嫌いなところに気付いてしまう自分に絶望する。
好きなのに嫌い。嫌いな部分を受け入れられない。
好きなところを思い出して泣きたくなる。
彼が紡ぎだした歌が頭をよぎる。
女はほのかに口ベタくらいが可愛いのに、愚痴だけは口達者な自分に笑う。
女はほっこり鈍感なくらいが可愛いのに、彼の言葉の端々をいちいち敏感に捉えてしまう自分が嫌になる。
しっかりついてこいぐらいがカッコいいのに、そんなこと言われてもって立ち止まって、君の目指す方向には行きたくない自分がいる。
君がしっくりきたと言うその景色は、私はしっくりこなかった。
自分の思い通りにはならん世の中、自分の思い通りにはならん他人。
ついていけなければそれまで。
ついていかなければそれまで。
私が好きだった君を、好きだった景色を、楽しかった君を、楽しかった景色を、夢中だった姿を、そんなに自分で卑下してくれるなよ。
好きだった男なのに、やっぱり好きな男。
未練たらたらなのは惚れた方の負けだから。
そうして、
自担じゃないのに心を動かされ、
君をきっかけでファンクラブに入り、
好きな男として登録していた君の名は、
とうとう変わってしまったとさ。